公爵令嬢の婚活事情〜王太子妃になりたくないので、好きな人と契約結婚はじめました〜
 お詫びのお茶会後。
 余ったパンケーキを手にシルヴィアが行きたいと希望したのはストラル伯爵邸だった。

「ハルくん、だっこー」

 パタパタパタパタと足音を立てて玄関で出迎えてくれたのは、ストラル伯爵家長女のアリッサで、

「アリィは相変わらず可愛いな」

 また大きくなった? とアリッサを抱き上げたハルは姪っ子にメロメロだ。

「アリィ、ご挨拶しないとダメだろう」

 ちょっとローテンションな口調で妹を追って来たのはレノルド。ストラル伯爵家嫡男である。

「ハル兄様、シル姉様、ようこそお越しくださいました」

 お会いできて光栄です、と礼儀正しくお辞儀をしたレノルドを見てシルヴィアは、ぐっと胸を押さえて悶えると。

「大人ぶってるレノくんが可愛い。可愛すぎる!」

 屋敷周辺に騎士団を配置すべきじゃないかしら? と割とガチトーンでそう言った。

「絶対にやめてください」

 周辺にも迷惑なのでと淡々とした口調でシルヴィアの提案をキッパリ断るレノルド。

「目の色以外伯爵に激似っ」

 小生意気っ! 可愛いっ! と抱きついて撫で回されるレノルドは、

「父様に敵わないからって、俺に絡まないでよ」

 もう、と怒る姿もとても可愛い。
 甥姪大好きなベルが構い倒すのもよくわかる。

「あらぁ、そんなこと言っちゃうとお土産のご本とハルさん特製パンケーキあげないわよ?」

 先程寄り道した先で見つけた本をチラッと見せれば、

「シル姉様大好き」

 本好きのレノルドは子どもらしくキラキラと目を輝かせる。

「現金なんだから」

 綺麗な手のひら返しにくすくすと笑ったシルヴィアはどうぞ、とレノルドとアリッサに一冊ずつ新しい本を差し出した。

「そういえば義姉さんは?」

 そっちに行くね、って連絡入れたんだけど、とアリッサを抱っこしたままハルはレノルドに尋ねる。

「ああ、母様は」

 レノルドが言いかけたところで奥からカツーンカツーンと何かを叩く音がした。

「え!? 何? 何の音?」

 突然の異音に狼狽えるシルヴィアに、

「二人が来るって聞いてから、塩釜作ってた。あと他にも浮かれて色々準備してた」

 リビングの方を指差してレノルドが説明する。

「塩釜?……って何?」

 ストラル伯爵家の人はなんで思い立ったら即自分で何かを作っちゃうのかしら? と自分の事を棚にあげ疑問符を浮かべるシルヴィアに対し、

「やった。義姉さんの塩釜好き」

 魚かな? 肉かな? とちょっと浮かれ気味のハル。

「お夕飯頂いてもいいのかしら?」

 お土産を渡すだけのつもりだったシルヴィアは、急に来たのに迷惑じゃないかしらと戸惑うも。

「むしろ食べて行ってくれないと困るよ」

 なんならお泊まりして行ってもいいよ? と引き止めるレノルド。

「アリィ、ハルにぃにとねる〜」

「アリィは夜中にママーって泣いちゃうでしょ」

 よしよし、とあやしながら寝るまで本を読んであげる約束をするハル。
 そのあやし方に既視感を覚えたシルヴィアがまた頬を膨らましかけたところで。
 
「母様、二人が来たよ」

 リビングに到着し、レノルドがドア開けた。
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