後悔
ケイスケはそのまま黙った。

過去を振り返り、私へ謝ったケイスケの横顔はとても暗く落ち込んでいて、初めて見る顔だった。
ケイスケは今どんな気持ちでいるだろう。
何を考えてるだろう。

私もあの時どう思っていたのか伝えなければ。
自分を責めてるかもしれないケイスケに違うって言いたい。


「…私もずっと考えてた。
ケイスケに甘えることも出来ず、勝手に寂しい気持ちになってバカなことをしたのは私なの。
悪いのは私なの。
私がいない方がケイスケは幸せになると思ってた。
ずっと苦しかった。でも、これは罰なんだって思った。」


自分の言葉が胸に刺さる。ひどく痛い。


「オレはアカリに甘えて欲しかったよ?
アカリの事、ずっと忘れられなかった。」


あの時、甘えられていれば良かったのかもしれない。
ケイスケはこんな私でも受けとめてくれただろうか。
逃げずにいれば、二人で頑張れてたかもしれない。
私だってケイスケを忘れた日なんてなかった。ずっと。

私の決断はやっぱり間違っていたのだろうか。
ケイスケ本人と話しているとそんな気がしてくる。

でも、ケイスケとやり直していたら今の私はなかった。
ケンジさんや皆に、会えていなかったと思う。
でも、ケイスケとやり直していたら違う私がいたんだ。
ケイスケと幸せに今も笑っていたのかもしれない。

でも。
でも。
「でも」ばかりを繰り返して考えている。
考えれば考えるほど分からなくなる。

何が正解だったの?
私はどこから間違ったの?
正解とか間違いだったとか、誰が決めるの?

あの時、ああしてればどうなっていたのかなんて、そんなの誰にも分かるわけない。

私が今いるここが全て。
私にはこの現実が全て。


――お前は今ここにいるんだから。


ケンジさんの言葉がよぎる。


「未来が見えたらよかったな…。」


無意識にそう呟いてしまった。
見えたらこうはなってない。
バカなことを言ってしまった。


「未来は見えないけど、俺が見たい未来はあるよ。
アカリと一緒の未来。」


こんなバカな私を笑うことなく、ケイスケはそう優しく言ってくれた。
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