後悔
イメージが湧くと、不思議と少しずつ実感がわいてくる。


「ここで、働くんですね。」

「そうだな。明日から弟が入って最終的な作業が始まる。
11月の末にはオープンしたいな。」

「もう少しですね。」

「あぁ。オープンに向けて更に準備を進めるから、今週いっぱいで今の店やめるぞ。お前も。」

「はい、今週いっぱいですね。」


ん?今週…?



「今週いっぱい!?
そんな、いきなりすぎませんか?!」

「大丈夫だ。話ついてるから。」


サラッと当たり前のように言うが、私が心配なのは生活の方だ。
なんて勝手な人だろう。
だけど、なぜか憎めない。
不思議な人だ。


「…わかりました。」

「よろしい。」


私の頭にポンと手を乗せ大きく撫でられる。
すっぽり頭を包む、大きな手が心地良かった。




次の日。

今日からケンジさんの弟、インテリアコーディネーターのコーシくんが来る。

そのために朝の早いうちにケンジさんと新しいお店で寄り打合せをして、時間になると今働いているお店に出勤する予定だ。

ケンジさんとお店に来ると、すぐに別の車がお店の前に止まった。
コーシくんだ。


「兄貴。おはよう。アカリちゃん、おはよう。」

「よぉ、コーシ。頼むな。」

「おはようございます!よろしくお願いします!」


コーシくんはすでに何度か来ているようでなれた様子で店内へ入った。

とりあえずで置いたキャンプ用のテーブルとイスに座り打合せを始める。

大体のイメージは伝えてあるようで、もう少し細かい要望なども伝えた。
コーシくんは寸法をはかり、「OK、OK!」と
帰ろうとしが、


「あっ!アニキ!アレ今日届けるわ!」

「おぉ、わかった。」


私にはさっぱりだけど、ちゃくちゃくと準備が進んでいるようだ。


「おっ!こんな時間か!アカリ店急ぐぞ!」


バタバタとコーシ君と別れ、急いでケンジさんの車に乗り込んだ。

途中、「アイツに任せておけば大丈夫だ」とケンジさんが言っていた。
少し嬉しそうに話していたのが微笑ましい。
出来上がりが楽しみだ。
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