冷酷元カレ救急医は契約婚という名の激愛で囲い込む
 夜、拓也は自分の隣で眠る香苗の髪を優しく撫でた。
 ずっと交流が途絶えていた母と交流が再開しただけでなく、この先二度と口をきくこともないと思っていた義父とも思いのほか親しく接することができている。
 自分ひとりでは、今さら家族の縁を取り戻そうなどと思いもしなかっただろう。
 それを取り戻すことが出来たのは、香苗のおかげだ。
「香苗、ありがとう」
 起こさないよう気を遣いながら、彼女の頬にキスをする。
 香苗はいつも、拓也に助けられていると言うが、掬われてきたのは自分の方だ。
 その恩を返すためにも、今度は自分が香苗を幸せにする番だ。
 一生掛けて、彼女に自分が与えてもらった以上の幸せをかえしていこう。
 拓也は、心にそう誓って香苗の隣で瞼を閉じた。
< 36 / 37 >

この作品をシェア

pagetop