崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない

1.責任の所在はどこにある②

「……は、え。ここ、どこ……?」
 薄暗い部屋。窓には見慣れたカーテンではなく、どこかのこ洒落たカフェのようなブラインドだし、天井には洋画で見るような三枚羽の白いファンが回っている。
 そして隣には私の隣でスヤスヤと眠る、やたらと顔のいい裸の男。
「わぁ。寝てると無害なんだ――って、はあぁ!?」
 一瞬現実から離れた感想を口走った私は、すぐに我を取り戻し声をあげてその男性から距離を取る。
「ぎゃあぁ!」
 しかも勢いよく離れたせいでうっかりベッド端まで来てしまったらしく、そのまま腕の支えを失った私は情けない叫び声まであげてしまった。
「――せぇ……」
 流石にその声で起きたのか、のそのそと上体を起こしたその男性がベッドから落ちたせいで姿の見えない私を探したのかキョロキョロと辺りを見回し、一拍遅れて気付いたらしくひょっこりと顔をベッドから出す。そして愕然としながら下に転がっている私へと怪訝な顔を向けた。
 
 前髪を下ろし、不機嫌そうな眉間のしわを無くしたその顔はより顔の良さを際立たせながらも、その相手に呆然とする。
「た、高尚、さん?」
「何やってんの? みのり」
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