崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない
 どうやら私は、何がどうなったのかとんでもない相手と特大のやらかしをしたらしい。

「顔洗ってくれば」
「あ、か、顔……」
「部屋でて右な。突き当たりの扉開けたら洗面所あっから」
「は、はひ」
 呆然としながら頷くと、説明を終えた高尚さんがベッドから起き上がる。その光景に思わずビクッとするが、幸いにも服を着ていなかったのは上半身だけだったようで、下は濃いグレーのスウェットを着ていた。
 その事実にホッとし、もしかして私たちの間には恐れた事態なんて何もなかったのかも、だなんて。
 
「いや、シたからな」
「ッ! なっ、なんでそんなこと突然言うのよ!?」
「みのりが無かったことにしようとしてる気がしたから」
(見抜かれてる……!)
 フンッと、朝なのにどこか尊大な態度で言われ思わずムスッも口をへの字に曲げてしまう。
「て、ていうかみのりみのりって」
「はぁ? みのりだって昨日俺のこと高尚って呼んでただろ」
「え! 嘘っ!」
「嘘じゃねぇって。で、顔は洗いに行かねぇの」
「行くわよ!」
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