崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない
 落選したネームを元にしたのか、それとも新たに描いたのか。どちらの可能性もあるが、そもそも私たち漫画家側からすればこういう漫画を描いて投稿することは珍しくもなんともないので、何故今読むように言われているのかと怪訝に思いながら最新の投稿記事に添付されている画像をクリックして拡大表示する。
 そして、出だしにドキリとした。

「……大学の講義、寝ちゃったから……ノート写させて……?」
 既視感のある、いやむしろ既視感しかないその始まりに、私はゴクリと唾を呑む。そして不気味な予感に戸惑いながら、私は次の画像へと画面をスライドさせた。
 次のシーンでは舞台が大学ではなくヒロインの家になっていて、見守る彼の横で必死にノートを写している。そんなヒロインを見守るヒーローは、さり気なく彼女の家のもので晩御飯を作り一緒に食べていた。
(この展開、私が考えていたのとまったく一緒だ……)
 ヒーロー側の設定に既に社長だとかそういった描写はなかったものの、その分彼の実家が会社を経営しており将来は家を継ぐといった会話もある。
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