崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない
 一瞬この雰囲気に流されかけた私がカッと両目を見開いて抗議すると、ふはっと高尚が小さく笑った。
 
「でも、今はそう思ってるから」

 だから寝ろ、と頬を摘まみながら言った彼の顔がすごく穏やかで、なんだか気が抜けてしまう。
(締め切りは刻々と近付いてるのに)
 だが高尚の言う通り、一度寝てリセットした方が効率もよさそうだ。それになにより、彼の温かさからくる安心感まで与えられてはもう起きていられない。
 気付けば私は優しさの海に抱かれるようにして眠りに落ちていた。
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