崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない
 コクリと飲んだ熱々のコーヒーが喉を通り、内側から体を温める。それと同時に私の心にも熱いものが広がったように感じた。

 「……ふう。みのり、何なら食べれそう?」
 自身のマグカップを見つめながらちびちびとコーヒーを飲んでると、パタンとノートパソコンを閉じながら高尚が私にそんなことを聞く。
「何ならって?」
「昨日、作ってやるって言っただろ。朝食になっちまったけどな」
 彼の言葉に、そういえばそんなことを言ってくれていたな、と思い出す。とはいえ、こんな不規則な生活でもなんとかやってこれたのは強靭な胃袋を持っているからという私は、「なんでも」とだけ答えた。

「そういや、今日は仕事行かなくて大丈夫なの?」
 高尚が作ってくれたスクランブルエッグとカリカリに焼いたベーコンを頬張りながら、ふと疑問に思いそう聞くと、唖然とした顔をされる。
「私何か変なことを聞いた?」
「いや、つーか今日、土曜日だからな」
「えっ、そうだっけ!?」
(完全に曜日感覚が狂ってた!)
 だから昨日スーツだったのか、と今更ながらに理解する。

「まぁ、事務所な……行ってもいいが……」
「?」
< 119 / 161 >

この作品をシェア

pagetop