崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない
 どこか歯切れ悪く顔を逸らした高尚に首を傾げると、持っていたフォークを置いた高尚が私を射貫くように見つめてきた。
 その真剣な表情に、何故か胸騒ぎがする。
「みのり」
「な、なに?」
 嫌な緊張が私たちの間に流れる。居心地の悪さに目を逸らしたくなるが、ここで逸らしてはいけない気がして必死に彼の目を見つめていた。
 少しの間の後、意を決したかのようにゆっくりと高尚が口を開く。

「……俺を、疑ってるか?」
「……、はぁぁ?」

 そうして言われた言葉に、私は盛大に顎を突き出してそう返事した。
 
「え。凄く緊張したんだけど、全く意味がわからなかった」
 正直にそう答えると、ぽかんとした高尚がみるみる眉を吊り上げる。そして盛大に吹き出した。

「あー、聞いた俺がバカだった」
「バカって言った方がバカだって知らないの?」
「それいつの時代の小学生だよ」

 ハンッと鼻を鳴らしながらそんなことを言われ、段々苛立ってくる。
(真剣に聞いたのに!)
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