崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない
 思い切り私が口をへの字に曲げると、高尚が私の頬に手を伸ばしぎゅっと摘まむ。ベッドで添い寝してくれた時に摘ままれた時はあんなに優しかったのに、今度はちょっと痛かった。あとで倍返しにしてやると内心誓いつつ睨んでいると、そのまま立ち上がった高尚に口づけられる。

「え、なっ」
「あー、不安になってた俺も本当にバカ」
「は? いや、何を」
「だって俺ならできるだろ」
「え?」
「俺は、みのりの漫画の次の展開を知っていたから」

 ぽつりと溢すように告げられた言葉にきょとんとした。
 確かに高尚が言ったことは事実ではあるけれど。
 
「なんで高尚を疑うことがあるの?」
「話の構成を知っていたのはみのりを除けば俺だけだし、浅見さんとは前回みのりの家で会ってるからさ。こっそり連絡先を交換してて、俺が彼女に情報を流した、とか。考えられる可能性は無限にあるだろ」
「え!? ど、どうしてそんなあり得ない想像が!? 絶対ないでしょ、どこにメリットがあるのかもわかんないし、とにかく高尚に限ってそれはない!」
 彼のその仮定に困惑し、慌ててそう断言する。だって。
「高尚、私のこと好きじゃん」
< 121 / 161 >

この作品をシェア

pagetop