崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない
(私は漫画家で、今取材に来てて! だから不審者じゃないし不法侵入したわけじゃない、けど)
 取材対象とは別の部屋で作業しています、は成立するのだろうか?

「や、やばい、ど、どうしよう……!?」
 一番避けなくてはならないのは、高尚がここで積み重ねてきたものを私のせいで壊してしまうことだ。
 いっそトイレに戻り籠ることも考えたが、もしエレベーターに乗っている人が女性で、そしてトイレに来たらもう逃げ場がない。応接室にしれっと戻り、「今村地先生と打ち合わせ中なんです」なんて言うのもありだが、今日は土曜日。頼めば土曜日でも対応してくれる事務所や弁護士はいるだろうが、高尚、今私服だったよなぁ、なんて思いガクリと項垂れた。
 昨日来た時はスーツだったのに、どうして着替えたのだなんて焦りからくる理不尽な怒りを勝手に覚えながら、どうすればいいのかわからずオロオロとしてしまう。そうこうしている間にエレベーターの階数表示がとうとう六階を示した。次である。
 
(四階から七階がこの法律事務所の所有だったよね? ということはこの事務所の関係者ってことだよね?)
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