崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない

5.友達じゃなく、戦友として①

『そろそろ手伝いに行こうか?』
 普段通りの浅見からの連絡に、思わずひゅっと息を呑む。

「いつも通りしなきゃ」
 疑いたくはない、でもどうしても頭に過るのは彼女のSNSで公開されていたあの漫画のエピソードだ。
「高尚とも約束したし」
 でもやっぱり信じたい。私たちは、友達だよね?

 ふぅ、とゆっくり息を吐いた私は、緊張で僅かに震える指先には気付かないフリをして、いつもの通り『お願い』と彼女にアシスタントを頼んだのだった。

 ◇◇◇

(正直に言えば少し不安だったけど)
 いつも通り浅見はしっかりアシスタントの仕事をしてくれ、完成度も今までと変わりない。もし彼女がSNSであげた漫画の内容がなんらかの方法で私のネタから盗ったものだったとすれば、こんなに普通に手伝えるものなのだろうか?
 罪悪感なんて持ってない、もしくは更に何か盗ろうとするような下心を持っているならばこんなにいつも通り振る舞えないはずだ。
 むしろつい気にしてしまう私の方が挙動不審で浅見に笑われたほど。
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