崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない
助手席に座り、沈黙に包まれた車内でぼんやりと外を眺める。いつも見ていた景色が車で来たというだけでこうも違って見えるのかと思いながら、私は出版社へ向かう見慣れたはずのその道を見つめていた。
そこまで距離があるわけではなかったお陰で出版社へはすぐに着く。案内に従い駐車場へ車を停めると、そこへ増本さんが迎えに来てくれていた。
「待たせたか?」
「いや。澤先生、お疲れ様です」
「お疲れ様です、増本さん」
当たり障りのない挨拶を済ませ、軽く頭を下げる。気が重いせいか、まるで歩くのを体が拒否しているように最初の一歩がなかなか出ない。そんな私の様子に気付いたのだろう。
「みのり、手、繋いでやろうか?」
「え」
「ほら」
増本さんの前なのに、そう言いながら高尚に手を握られた――かと思ったら、まるで振り子のように大きくてを揺らしながら歩き出す。
「ちょっと!? なんか幼稚園児みたいになってるんだけど!」
「ははっ、ひとりじゃ歩けないみのりを引率してやってんだ。正解だろ」
「ひとりで歩ける!」
いい年した大人が何をやっているのだ、と焦った私が手を離すと、ニマッと笑った高尚が私の前を歩き出した。
そこまで距離があるわけではなかったお陰で出版社へはすぐに着く。案内に従い駐車場へ車を停めると、そこへ増本さんが迎えに来てくれていた。
「待たせたか?」
「いや。澤先生、お疲れ様です」
「お疲れ様です、増本さん」
当たり障りのない挨拶を済ませ、軽く頭を下げる。気が重いせいか、まるで歩くのを体が拒否しているように最初の一歩がなかなか出ない。そんな私の様子に気付いたのだろう。
「みのり、手、繋いでやろうか?」
「え」
「ほら」
増本さんの前なのに、そう言いながら高尚に手を握られた――かと思ったら、まるで振り子のように大きくてを揺らしながら歩き出す。
「ちょっと!? なんか幼稚園児みたいになってるんだけど!」
「ははっ、ひとりじゃ歩けないみのりを引率してやってんだ。正解だろ」
「ひとりで歩ける!」
いい年した大人が何をやっているのだ、と焦った私が手を離すと、ニマッと笑った高尚が私の前を歩き出した。