崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない
「……。私がみのりのパスワードを知ってるとでも? それに、そもそも私が接続したという証拠にもならないわよ」
「だからこそ、端末情報を確認するためにタブレットとスマホの提出をお願いいたします」
 再度同じことを言った高尚に、今度は私が首を傾げる。浅見がさっき言ったように、私はあまりパソコン関係には詳しくなく、高尚が何をしたいのかがわからなかったのだ。

 そして私が話についてきていないことに気付いたのだろう。一瞬だけ表情を緩めた高尚が私にもわかるように説明を付け加えてくれる。
「みのりのクラウドファイルのセキュリティを強化して接続端末名も出るようにさせてもらった。みのりにも黙っていてごめんな」
 その説明に、浅見もビクッと肩を震わせた。

「私は全然いいんだけど」
 ちらっと浅見の方を見る。フイッと顔を逸らされたせいで彼女の表情は見えなかった。
「確認、させていただけますね?」
 高尚の言葉に、浅見がはぁっと大きなため息を吐く。そして突然ハハッと乾いた笑いをあげた。

「あーあ、みのりは機械とか疎いからいけると思ったんだけど」
< 149 / 161 >

この作品をシェア

pagetop