崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない

エピローグ:今、言質は取ったから

「相変わらず、本当にモデルルームみたいだよね!」
 はしゃいだ声をあげ、久しぶりに来た高尚の部屋をくるりと見回す。どこかのモデルルームのようにコンセプトが統一されたシンプルな室内だが、不思議と生活感が滲んでいるように見えるのは、少しずつ私用の物が増えているからかもしれない。

「ね、今日晩ご飯どうする? というか、高尚は事務所戻らなくってよかったの?」
 会議室から浅見が出て行ったあと、増本さんと打ち合わせもしたのだが、高尚は事務所に戻ることなくロビーのベンチで座って待っていてくれた。
(なんだかんだで高尚っていつも仕事してるのに、今日はいいのかな)
 仕事が忙しいというのもあるのだろう。でもそれ以上に、彼が自身の仕事が好きでやっていることがよくわかる。職種こそ違うが、結局私たちは似た者同士なのだ。
 だからこそそんな疑問の浮かんだ私がそう質問すると、高尚がふっと表情を緩めた。

「今日はいい。午後休取ってある」
「休日でも職場に行くし土日関係なく家で仕事してるのに、おかしくない……?」
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