崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない
「き、気に入ったって……、せめてそこは好きって言いなさいよ」
 さっきまではあんなに自分のやらかしでへこんでいたのに、今は一転してドキドキと高鳴る自分の心臓。その現金さに呆れつつ照れ隠しでそう口にすると、しれっとした表情で彼が再び口を開く。
「昨日初対面だぞ、一目惚れじゃないことはみのりもわかってんのにそこで嘘ついてもな」
「ちょっ、それはそうだけど!」
(でもその言い方はあんまりじゃない!?)
 ノンデリだ。ノンデリカシーだ。いや、平気で上っ面だけの好きを繰り返すより誠実かもしれないけれど!
 一応告白した側の人間が平然と好きじゃない発言をしてくるという衝撃に内心を大荒れさせていると、繋がれていた指先を少しだけ強く握られた。

「でも、俺はみのりを好きになるよ」
「な、なにを根拠に」
「確信があるってだけ」
 その言葉にドキリと心臓が激しく高鳴る。
 どこからその自信がくるのかはわからないが、自分への好意を自信満々に断言されて嬉しくない人なんているのだろうか。

「そんで断ったら、みのりは彼氏でもない相手とそういうコトをする女ってことになるわけだけど」
「っ!?」
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