崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない

2.これが、私なのだから①

 このまま人気が出なければ遠くない未来に打ち切りが来る。だがそれ以前に第五話の締め切りもやってくるということで、現在絶賛下書き中である。
 そして下書き中の私の机の背ろで、人物の下書きができたページから指定の背景を入れてくれているのは、アシスタントであり同じ雑誌で同時期にデビューした漫画家の浅見恵麻、ペンネームは来栖あさみだ。

 デジタルの私は、本来アシスタントさんに家まで来て貰う必要はない。一枚の原稿用紙を各担当に回して作業するアナログ原稿とは違い、デジタルであればアシスタントさんも自宅にいながらデータを共有し在宅での作業が可能だからである。
 とはいえ、人間というのは生きるために食事が必要で、そして生活すれば部屋は汚れるものなのだ。そこを、同期のよしみだからと自身の手が空いている時はこうやってアシスタントだけでなく食事や掃除など私生活の部分のフォローまでしに来てくれるという、控えめに言って神友達だった。
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