崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない
「少女漫画のヒーローの顔は標準装備ですよ。……やっぱり、弱いな」
 そう言って左手を顎に当てて考え込む様子を見せた増本さんは、トン、と右手の人差し指でネームに描かれているヒーローを指さした。
「彼の欠点は?」
「欠点、ですか?」
「あぁ。ヒロインは問題なく生き生きと描けているし、笑ったり怒ったり悩んだりと人間味がある。じゃあ、このヒーローは? 精一杯生きているヒロインをフォローする役割に徹しているせいで、都合よくみえるんだ。人間味がない。このロボットに先生は惚れますか?」
 そう質問されて、再びネームへと視線を落とす。確かにこのヒーローは格好良く、完璧で冷静なスパダリだ。だが、こんな人間本当に存在するのだろうか? 少女漫画といえど、そこにリアリティがひとつも見出せなければ感情移入は出来ない。ヒロインに同調してヒーローを好きになって貰わないといけないのに、ピンチの時に都合よくそこにいるだけのロボットのようになっている。
(読み切りだとページ数の制限もあるから、元々好きだったって設定で乗り切って来たけど)
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