崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない
ちなみに彼の家の鍵はどこぞのホテルのようにカードキーである。もちろん完全オートロックで、コンシェルジュまでいる。しかも一階には食品スーパーが、地下には入居者が利用できるフィットネスジムまであった。
私には一生縁がないと思っていた、というかこんなタワマンに住む未来なんて想像すらしなかったせいで五回目なのにちっとも慣れず居心地の悪さを感じながら、彼の方へと顔を向ける。
「初めて高尚が出掛けようって誘てくれた時のことを思い出しただけ」
「あー、そういや断られたな」
「その次の週も一度は断ったし」
「ははっ、確かに。まぁ、みのりの仕事が順調そうだったら締め切り終わってからでよかったんだが」
言いながらチラッと私の方を見た高尚は、わざとらしい大きなため息を吐いた。
「進行詰まってるくせに抱え込んで何もかも疎かにしてたからさぁ」
「べっ、別にそこまでじゃなかったし!」
「そうかぁ? ま、俺というモデルを観察し放題って公約だったし」
「公約って」
高尚のその言い方に思わず笑いが溢れる。
冗談めかして話す彼のお陰で、私の中の罪悪感が消えるのを感じた。
私には一生縁がないと思っていた、というかこんなタワマンに住む未来なんて想像すらしなかったせいで五回目なのにちっとも慣れず居心地の悪さを感じながら、彼の方へと顔を向ける。
「初めて高尚が出掛けようって誘てくれた時のことを思い出しただけ」
「あー、そういや断られたな」
「その次の週も一度は断ったし」
「ははっ、確かに。まぁ、みのりの仕事が順調そうだったら締め切り終わってからでよかったんだが」
言いながらチラッと私の方を見た高尚は、わざとらしい大きなため息を吐いた。
「進行詰まってるくせに抱え込んで何もかも疎かにしてたからさぁ」
「べっ、別にそこまでじゃなかったし!」
「そうかぁ? ま、俺というモデルを観察し放題って公約だったし」
「公約って」
高尚のその言い方に思わず笑いが溢れる。
冗談めかして話す彼のお陰で、私の中の罪悪感が消えるのを感じた。