崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない

2.これが、私なのだから③

「んー……」
 前回同様リビングにあるL字型のソファに陣取った私がタブレットと睨み合いながら思わず唸る。
(ここが不自然なのよね)
 手はネームの通りに下書きを進め、考えるのは第六話目の内容だ。

 現在四話まで掲載し、五話目の下書きを進めているこの話は、女子大生のヒロインが幼馴染ヒーローの溺愛に気付かず勝手に片想いを拗らせていく、所謂ジレジレの恋愛を楽しむもの。
 安定の人気と言えば付き合っていない状態で先に結婚させたり、偽装結婚させたりという結婚もので、最近の流行はパイロットや警察官、弁護士や医者などのハイスペックな彼との溺愛ものだ。
 だが、私はこれで三度目の連載、しかも前二回は途中で打ち切りになっているのだ。今度こそ、という気合を入れに入れた結果それらの流れを外し、異色という形で少しでも目立てないかと大学生同士のジレジレものにした。
(結果、人気が伸び悩みまたも打ち切りの危機なんだけど)
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