崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない
 設定で埋もれ、キャラも立っていないとなればそれは打ち切りまったなし。だからこそ彼に少しでも人間味を足してロボット感から脱却し、少しでも魅力を向上させたい。しかし、連載途中でのキャラ変更はあまりにも不自然だし、そこが悩みどころだった。キャラ崩壊だけは絶対に避けたい。
(そのためには……)
 チラッと高尚の方へと視線を向けると、仕事中だけ眼鏡をかける彼がノートパソコンで何かを打っている。私の視線に気付かないくらい真剣な表情で仕事をしている彼は正直大人の男感があって格好いいが、作業場がダイニングテーブルのせいで少しだけ違和感があった。

(多分仕事部屋もあるのよね)
 一人暮らし用というよりファミリー向けの物件かと思う部屋数があるのだ。その一室に仕事場を設けていてもおかしくないが、おそらく私に合わせてここで仕事をしているのだろう。
「それって、一応これがデートだから?」
「うん? 何か言ったか」
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