崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない
 口に出すつもりはなかったがうっかり言葉にしてしまったらしく、流石に気付いた高尚がノートパソコンから顔をあげる。内容までは認識できなかったのか聞き直してくるが、改めて口にするのは少し気恥しくて私は顔を左右に振った。

「ヒーローのことを考えてたんだけど、どうやって魅力を足そうかなって思って」
「まんま俺のイケイケな姿を描きゃいーじゃん。俺をモデルにするんだろ?」
「イケイケって……。というかそれを自分で言うと途端に子供っぽーい」
 ふふん、と何故か得意気にそう提案されつい笑ってしまう。
 私は完全に冗談だと思ったのだが、どうやら高尚は思ったよりも本気だったらしくムスッと口をへの字に曲げてしまった。その子供っぽい表情が可笑しくて更に笑ってしまった、のだが。
「……けど子供っぽい、はありね?」
 今回のヒーローは大学生。成人していても学生というまだ子供の領域だ。
(まぁ、モデルは学生でもなければむしろとっくに大人なんだけど)
 
 社長業やヒロインのサポートをしている時はひたすらに格好よく。だが大学生をしている時は、学生らしく振舞わせるのはありかもしれない。
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