崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない
「あー、いいかも。猫っぽい属性をちょっとだけ足して……いや、属性増やしすぎたらそれこそ収拾つかなくなるか。でも子供っぽい仕草をさせる時に猫耳をつけてデフォルメするくらいならありかも」
 構われたいのかもしれないとわかっていながら新たな妄想が捗った私は再びさっき保存したファイルを開き、今思いついたことをメモだけして上書き保存した。思いついた全てを盛り込むかはまだ決めてはいないが、万が一私が属性を盛りすぎてしまったとしても、増本さんが一刀両断してくれるだろう。
 そんな他力本願なことを考えながら、クラウドフォルダを閉じた私は、そのままタブレットもスリープモードにしてローテーブルへ置いた。
 そして高尚が淹れてくれたコーヒーを手に持って、彼の隣へと移動した。

「原稿いいの」
「ちょっと休憩。高尚もでしょ」
「まーね」
 原稿を心配しつつもまんざらではない様子の高尚に、さっきした想像がまたも合っていたと内心答え合わせしてこっそり吹き出してしまう。
 そんな彼に甘えたくなった私は、彼の肩にグリグリと後頭部を押し付けながらもたれかかった。

「どうかしたか」
「ううん、いいなと思っただけ」
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