崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない
 お疲れ様、と声をかけて一緒に休憩を取る。
 展開に迷い詰まっても、視線の先に真剣に頑張っている相手がいるという状況はもう少し頑張ろうというやる気を出させてくれるし、熱中しすぎていてもこうやって相手のタイミングで一息つけるというのはいい気分転換だった。

「こうやって会話するのって一緒にいる時間の何割くらいなんだろ」
「状況にもよるが一割くらいか?」
「あはは、そうかも」
 昼過ぎに集合し、翌日の夕方に解散する。丸一日以上一緒にいても、一時間もないだろう。もちろんそれ以外の時間全部で漫画を描いているのかと聞かれれば、お風呂も入るし睡眠だって取るけれど。
(付き合い始めたばかりなのよね、私たち)
 それでもこのペースで付き合ってくれることが凄く心地いい。

「あー、甘えてるなぁ」
「そりゃ光栄だ」
 思わずそんなことを呟くと、ふはっと笑いながら高尚がそう口にした。

(増本さんの言う通りだったなぁ)
 特大な欠点がある、と紹介された高尚。でもその欠点こそがヒーローの魅力をあげるのに重要だとも言われていた。
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