崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない
 その説明を受けた時は、正直欠点なんてない方がヒーローとして相応しいとすら思っていた。実際に彼に会った時も、その尊大で傲慢かつ子供っぽい態度が鼻につき苛立たしく感じたのだ。
 けれど彼のいいところも知った今は、そんな彼の姿がどこか微笑ましくてもっと見たいと思ってしまう。
 もちろんそれは、根を詰めすぎないようにと気配りをしてくれて、私のことも心配しながら応援してくれる大人な部分が格好いいからこそでもあるのだが。

 実際高尚と付き合い、私の中の『ヒーロー』という偶像が『実際にどこかにいる青年』へと実態を持ったことで出る発想も多く、正直、私側に一方的に利のあるお付き合いのような気がしてしまうくらいであった。

 だからこそ、高尚の彼女が私でいいのかと少し不安もある。
 現状の私はこうやって彼の休日に家へ押しかけ、場所を与えて貰い、快適な環境で詰まったら観察までしつつひたすら漫画を描いているだけなのだ。
(もちろん漫画を描くことは私の仕事だし、それに漫画家が夢だったんだもん。大好きな仕事で辞めたいとかは絶対思わないけど)
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