崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない
 それにさっきのは、私と元カノを比べたっていうより、嫌なことを私がしない、と言いたかったからというのも理由のひとつだ。
 万が一あの発言が、私が元カノより優れているからというような意味合いであれば話は大きく違ってくる。まぁ、これも捉え方というやつなのかもしれない。

 そんな私の考えが伝わったのか、高尚がふぅ、と小さく息を吐いた。
 表情にも僅かに安堵が滲んでいる。

「教える気になった!?」
「いや、ならん。失言については全面的に俺が悪かったけど」
「けど?」
 徹底的に教えないスタンスの彼にムスッとすると、今度ははぁとため息まで吐かれた。
「でもみのりの今の漫画読んだけどさ。あれだけ一途なヒーローに元カノとかいたら幻滅じゃないか?」
「うッ」
 そのもっともな指摘に私から思わず呻き声があがった。

(それはそうなのよね)

 この漫画は幼馴染ヒーローのひたすら溺愛ラブコメだ。読者はその一途にヒロインを想うヒーローにから『私もこんなに一途に愛されたい』とそう主観的に感じて貰うことでトキメキを出している。
 
 もちろん元カノがいる、むしろいなくてはだめなパターンもある。
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