崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない
 今まで軽いタイプだったヒーローがヒロインに惚れて一途になり、重いほどの溺愛をするパターンなどだが、それらはあくまでも冒頭からヒーローの設定を印象付ける必要があるのだ。
(この連載で今からそんな設定を後付けすれば、確かに反感を買いそう)
 受け入れて読んでくれる勢だっているだろうが、この一途なヒーローを良いと思ってついてきてくれた読者は少なからず裏切りを感じるだろうことは容易に想像できた。

「やっぱりナシかー」
 チェッと小さく呟き私がタブレットの方へと視線を戻す。
 私からの追及が終わったことに気付いたのか、高尚がわざとらしくゴホンと咳払いした。

「そっち一区切りしてんなら風呂入って先に寝ていいぞ」
 そう言われ、再び時計を確認する。
 さっき気付いた時はまだ日付は跨いでいなかったが、いつの間にか深夜一時を過ぎていた。

(気持ちまだ早いけど)
 気付けばすぐに朝になっている夜型人間の私からすれば、一時なんてまだまだゴールデンタイムだ。先にチャチャッとお風呂に入るのはいいとして、そのまま寝るのももったいない気かする。

 しかし今の私は彼氏の家でお泊まりデート中なのだ。
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