崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない
 結局「可愛い」を連呼しながら私の体をどんどん暴く高尚に、私はもう意味のある言葉を返せなかった。
 彼の腕の中で甲高い嬌声をあげ、言葉にならない言葉をはくはくと溢す。
 溶けそうなほど熱い愛撫を与えられた私は、彼の欲を受け入れる頃にはすっかり全身から力が抜け、荒い呼吸を繰り返していた。
 そのまま彼に何度も揺さぶられ、快感の海へと誘われる。行為の中で囁かれる愛の言葉なんてその場限りのもの、なんて昔は思っていたけれど。

「好きだ、みのり」
「ん、私も」

 余裕をなくした表情で切実にそう告げられるだけで、心が満たされ幸福感に包まれる。
(この気持ちを、主人公たちにも感じさせてあげたい。幸せにしてあげたい)
 恋人との行為中に、仕事のことがフッと脳裏に浮かびそんなことを思った私だが、そんな私こそが私なのだと、彼に好かれている私なのだとそう感じたのだった。
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