崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない

3.乗り越えろ、修羅場!③

 少し遅めの十時にスマホの目覚ましアプリのアラームが鳴り、のそのそと止める。そのついでにメッセージアプリを起動すると、高尚から『そうか。行ってきます』とシンプルな返信が朝の七時に受信していた。その返信にくすりと笑い、『仕事頑張って』と送ってから起き上がる。
 事前に買っておいた総菜パンを浅見と食べてから今日の作業を開始すべく一緒に作業場へと移動した。

「背景はばっちりだった!」
「本当? よかったー。じゃあ私はモブの人物のペン入れしていけばいいかな」
「うん。お願いします」
 流石自身もプロの漫画家だけあり、進行がスムーズで的確である。まぁ、それだけ長い間私のアシスタントをしてくれているということでもあるのだけれど。

 集中し作業を始めた私たち。室内には気分をあげるために流行っている音楽をランダム再生し、その音楽以外はただただ静かな時間が流れていた。
 暫く作業に没頭していると、突然スマホの着信音が鳴り出してビクリと肩が跳ねる。

「彼氏?」
「いや、高尚から電話って滅多にかかってこないし」
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