崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない
「こ、呼吸するように暴言吐いてる……」
(欠点しか……見当たらない……)
 その事実に愕然とした。

 確かに条件だけ箇条書きにすれば完璧な人材なのかもしれないが、欠点があまりにも大きすぎないだろうか。モデルにするとしても、この暴言ばかりのヒーローに読者が惚れる未来なんて想像できない。
 ギャップが確かにいいとは言ったが、ギャップの温度差で私の読者が風邪をひいてしまう未来が見える。
 そんな高尚と呼ばれた増本さんの高校の同級生サンを呆然としながら眺めていると、突然彼がぐりんと私の方へと顔を向けた。
「っ」
 整った真顔でじろりと見られると威圧感が半端ない。どことなく居心地の悪さを感じた私が少しだけ視線を外すと、頭上から乾いた笑いが降ってきた。
「若作りはやめた方がいいんじゃないか」
 暴言と共に。

「若作り、ですって……!?」
「うおっ、みのり先生落ち着いてくださいっ、つーか高尚すぐに謝れ!」
「事実を教えてやっただけだろ。そんなにゴテゴテの化粧に魅力とか感じねぇの。アンタが俺か秀次のどっち狙いか知らねえけど、狙うなら――」
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