崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない
(資料漫画にしては渋いけど)
 怪訝に思いながら表紙を確認すると、なんと弁護士ものの漫画のようである。

「さかこれで弁護士との付き合いを学べとかそういう……?」
「ははっ、まさか!」
 そんな想像をしドキリとするが、どうやらこの漫画は私宛ではないらしい。
「それ、高尚が読みたいって探してたんだよ」
「そうなんですか?」
 いつも敬語の増本さんが砕けた話し方になる。友人の話になって少し気が緩んだのだろう。
(高校からってことはかなり長い付き合いになるんだもんね)
 目元も柔らかく細まっており、ふたりの仲の良さがうかがえた。

「流石に仕事で使うわけじゃないだろうけど、結構探してたから」
「電子で配信とかしてないんです?」
「それ、実は結構古い漫画で。先生も割と年配の方だから許可が出なくて、かつ絶版になっていて」
「あー」
「多分俺より先生の方があいつに会うの早いと思うんで、渡しておいて貰えませんか」
「わかりました」
「つーわけで、さっきのケーキは頼み事のための賄賂みたいなもんです」
「あはは、なるほど」
< 82 / 161 >

この作品をシェア

pagetop