崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない
 ここで好きなところなんかを口にするのはマズイと私の第六感が言っていた。

「そうなんだぁ」
 ふぅん、と若干興味を失ったのかケーキへと視線を戻した浅見がそのまま一気に食べ進める。
「でも、弁護士なんでしょ」
「ッ」
 ぽつりとそう重ねられギクリとする。そうだ、増本さんの会話を浅見も聞いていたのだ。
 
「私なんてこの間のコンペも落ちたし」
「そういうの続く時ってあるよね! 私も経験あるからわかるよ!」
 ここぞとばかりに新しい話題に全力で乗ると、どうやら彼氏の話題が流れたようでほっと息を吐いた。
 
「新しくだしたプロットの反応もイマイチなんだよね」
 プロットというのは、ネームの前段階の、所謂話の骨組みの部分だ。その話がどんな話なのか、どうやってヒロインとヒーローが恋を育み、どんな事件に遭遇し、そしてどう解決してハッピーエンドを迎えるのかを書いたものである。
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