崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない
 同じくどこか放心した様子の浅見としみじみそんな話をしながら部屋を見回した。アナログ原稿のように床にトーンや紙が散乱している、なんてことはないものの、眠気覚ましに貼った冷却シートや、目がシパシパした時に目元を温める時に使った温感タイプのアイマスク、ペットボトルの飲み物などのゴミが散乱している。
「部屋に置いてるゴミ箱が小さいのか?」
 ゴミをゴミ箱へ入れるだけの簡単な作業が、どうしてこんなに難しいのか。ゴミ箱の周りに散乱したそのゴミたちを見ながら辟易とするが、肝心のゴミ箱に資料として買った本がまるで蓋のように置かれているのを見て自身の雑さにガクリと項垂れつつ本を回収する。
(そりゃゴミ箱にゴミは入らないか)

「もう次の話も考えてるの?」
「この間次のエピソードとして使えそうなやつができたからメモってあるよー。若干の書き足しはいるだろうけど、そのままでプロットとして成立しそうだから近々増本さんに提出するつもり」
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