崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない
「ふ、ははっ、おまっ、ははは!」
「なっ、私にも浅見に向けた外面少しは向けなさいよ!?」
「それ、くはっ、トドメじゃね? 暗にお客様対応と彼女対応の違いだってマウント取ってるように聞こえるけど」
「……ッ!」
「はぁ?」
 突然吹き出した高尚は、何がそんなにツボに入ったのかお腹を抱えて笑い出すし、さっきまで饒舌だった浅見は黙ってしまうしで私はわけがわからない。
 ひたすら首を傾げ、このよくわからない状況に戸惑っていると、依然笑いすぎで目元に涙を滲ませつつ高尚が私の頭をくしゃくしゃに撫でる。
 
「ちょ、やめてよ、ボサボサになる!」
「既にボサボサのボロボロじゃねぇか」
「酷い! というか浅見の前で外面剝がれてるわよ、猫被りなおしたら?」
「うはっ、ここでダメ押しすんのかよ」
「もうっ、本当に意味わかんないんだけど」
 ブスッとしながら乱雑に高尚の手を払い退ける。そんな対応をされているのに、相変わらず楽しそうに笑っている彼と、私の顔を交互に見た浅見は「帰る」と一言だけ残し家を出て行った。

「あ、というか増本さんから漫画預かってるよ。それ取りに来たんでしょ?」
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