抜け、幸子!
いよいよ、レースが始まった。

レースの展開は、やはり練習通りだった。

幸子の順番が刻々と近づいてくる。

バトンゾーンを担当していた私には、幸子の顔がだんだん険しくなっていくのがわかった。

そして……。

5組の芳樹にバトンが渡った。

会場から先ほどまでとは比べものにならないほどの大声援が起こった。

教師も親も来賓も、そして全ての子供達の声援を受けて芳樹が走る。

幸子がバトンゾーンに入る。

幸子が「先生……」とすがるような視線を送ってきた。

私は何も言わずに大きくうなずいた。


遂に幸子にバトンが渡った。

芳樹と幸子の差は、練習の時とほぼ同じ。

芳樹は第2コーナーを走っている。


幸子が走り出した。

懸命に芳樹を追いかける。

1位を走る芳樹、必死に走る幸子。

その差はみるみる縮まっていった。




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