怜悧な裁判官は偽の恋人を溺愛する

「一応本社に問い合せたけど、やっぱり現状は出禁は無理そうなのよ。いっそ、貴女への指名を禁止にする？」

「ありがとうございます、ただ……それだと、前みたいに他のスタッフにも迷惑がかかってしまいますから」

　私が休みの日に木下が来店した際、店長が不在だったため別のスタッフが対応したことがある。木下は接客が気に食わなかったらしく、スタッフに怒鳴ってきたのだ。それからは、私か店長で木下は対応することにしていた。

「あの時は……たまたまクレーマー慣れしてない子だったからよ。歴の長い子たちなら、面倒な方のかわし方も十分に心得てるじゃない。大変な仕事は分担したほうが良いと思うわ」

「お気遣いありがとうございます。少し、考えさせてください」

「……分かったわ。じゃあ、何かあればすぐに相談してね」

　店長に肩を叩かれ、私は売り場に戻って行った。