怜悧な裁判官は偽の恋人を溺愛する
「ありがとう。月島君も、気をつけてね」

「? あの男性客、男の店員には興味ないんじゃないの?」

「そうじゃなくて……月島君、女の子からモテるから」

 涼太は男性アイドルのような爽やかなルックスをしており、指名客を多く抱えている。彼が人気というのもまた、このフロアでは有名な話なのだ。

「そうだなあ……今のところはマナーの良いお客様に恵まれてるけど、高階さんみたいに、いつ何が起こるか分からないしね」

 お客様から好感を持たれるのは、接客業として嬉しいことだ。けれども、好意が悪意に変わるのは一瞬なのだと、私もまた痛感していた。

「とりあえず、その客が暴れたりしたらすぐ呼んでね。他の男性スタッフたちと一緒に、止めに行くから」

「ありがとう。助かるわ」

 いくら木下の接客に慣れていても、万が一手を出されたならば、私の力では太刀打ちできない。そのため、彼のひと言はとても心強いものだった。

 裏口のドアを開けると、いつも通り優流が待っていてくれていた。

「御堂さん、お待たせしました」

「お疲れ様です、高階さん……?」

 優流は、不思議そうに涼太に視線を向けた。
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