月とスッポン ありのままは難しい
話を聞いていないのではなく、説明する気がないだけのようだ。
「在原業平は【ちはらふゆ】の人でしょ。柿本人麻呂は何者かは知らないけど、聞いた事がある。小野小町は世界三大美人でしたっけ?」
「《柿本人麻呂は万葉集の第一歌人、歌聖と称せられた奈良時代で最重要の歌人です》」
「ほう」
きた道を戻りながら、大河の講義を聞く。
「《小野小町は茜の言う通りクレオパトラ、楊貴妃と並ぶ【世界三大美人】の1人ですね。ただ、小野小町が入るのは日本だけで、世界では小野小町の代わりにヘレネーが入ります》」
「ヘレネー?聞いた事ないですけどね」
「《ヘレネーはギリシア神話に登場するメネラーオスギリシア神話の英雄であるメネラーオスの正妃です。
メネラーオスはトロイア戦争におけるギリシア側の副大将で、伝説上のスパルタ王でもあります》」
「ほう」
車に到着して運転席に乗り込もうとすれば、助手席へと追いやられる。
次は私だ!
と睨んでも「近江神社の社号碑と鳥居を撮るのではないですか?」と言われてしまう。
「車の中から撮るか、大河さんが撮れば良くないですか?」
「アングルが悪いとか言われたくないので、自分で撮ってください」
うん。言いそうだ。
お言葉に甘えよう。
一の鳥居から見える木漏れ日の中を歩く人と社号碑をおさめる。
満足して車に戻ろうと振り返れば、こちらを見て微笑んでいる大河がいた。
なんかこういうのいいなぁ
そう思ってしまった。そう思うと自然に微笑んでいたんだと思う。目があった大河の目尻が一段と下がったように見える。
思わず後ろを振り向いてしまった。かなり不自然だ。スマホを再度取り出し、遠目の社号碑を撮ってみる。
少しはごまかせただろうか?