月とスッポン      ありのままは難しい

「《仏教ではだれの弟子であるか、だれの教えを受け継いでいるかという【法統】を大事にしているそうで。この天台教学の解釈のちがいをめぐり、円仁の弟子筋と、円珍の弟子筋が対立したわけです。そこに朝廷や政治などが絡んでいくと戦いが激化していったというわけです》」
「解釈の違いでの戦いではなくて、周りの雑音が争いを激化させたって事?」

「そう言う事になりますね」
「どこの世界でもよくありそうな展開ですね」
「状況は違えど、よくある事です」

大河が苦笑いをすれば、目の前に立つ金堂へと辿り着く。

「ここには誰も見た事にない秘仏があるそうですよ」
「《弥勒菩薩ですね。三井寺が創建された時に 天武天皇から賜わったと伝えられ、絶対の秘仏となっているため、1300年あまり前からこの仏様を拝した人は誰ひとりいないそうです。
寺伝によれば、三国伝来の霊仏といわれ、 中国天台宗の高祖慧思禅師が修行されている時に降臨された 弥勒仏さまが自らの分身として残された三寸二分の御像であるといい、 この御像はつねに光を放ち全身が温かく 『生けるがごとし』霊仏であったと伝えられてます。

この霊仏が百済に伝わり、やがて用明天皇の時に日本に渡来し、 ことに天智天皇はこの弥勒さまを崇拝されたそうです。

幾多の焼き討ちに遭いながらも、誰の目にも触れず守り抜けたのは奇跡としか言いようがありません》」
「ここでも焼き討ち」

金堂にお邪魔して、固く閉ざされた扉の向こうにある秘仏に思いを馳せる。

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