月とスッポン ありのままは難しい
八角輪蔵を間近で堪能して外に出れば目に入る三重塔。
三重塔を目指し歩き始める。
「茜が暗闇が苦手なのはわかるのですが、奈良でのキトラ古墳では暗闇が大丈夫だった気がします。それに今回もさほど暗くなかった気がするのですが、何が違うのですか?」
人が苦手なものをずけずけと土足で踏み込んでくる男だ。
聞けばなんでも答えると思っているのか?
「人がいるかいないか?」
「人がいれば平気なのですか?」
やけに突っ込んでくる。
「そうだね」
石橋の向こうには三重塔。
でも、その前に石橋の真ん中で立ち止まる。
ここだ。
石橋の上から下の道を眺める。
これぐらいなら飛び降りれそうだ。
ジャンプをするマネをしてみる。
足が地面から離れるその瞬間、大河に手を引かれバランスを崩した。
「危ないなぁ」
不服顔で大河を見れば眉間に皺を寄せて、「それは私のセリフです」と怒られた。
「飛び降りないよ。ただマネをしただけ」
「マネ?」
「ここは幕末を舞台にした漫画を実写化した映画のロケ地。主人公が登場した場所。その気分を味わっただけ」
ここから下に降りる道がない事を確認してから、三重塔へと歩き出す。
「三井寺はそのために来たんですから、少しは堪能させてくださいよ」
「先にそれを言ってください。幕末という事は、坂本龍馬か新撰組。あるいは薩長あたりの話ですか?」
「新撰組?薩長?」
思わず首を傾げる。
「幕末に人斬りで有名になった主人公が人斬りを辞めたけど色々と巻き込まれる話だよ」
「色々とは」
「それは見てのお楽しみでしょ。4部作だから」
「4部」
「そう。ちなみに、競技カルタは3部作」