月とスッポン      ありのままは難しい

「狩野派とはよく聞くけど、流派なんだろうなぐらいしか思ってなかったです」
「《狩野派は、幕府の御用絵師として襖や障壁画などを制作した絵師集団です。
狩野派の始祖、狩野元信から始まる【狩野家】の血縁者を中心に構成され、室町時代から江戸時代までの約400年にわたり画壇の中心に君臨しました。
家の格式や序列によって、城や寺院などの障壁画を制作する絵師が決まっていたそうです。

画家としては、狩野派の創始者である正信、桃山時代の天才画家・永徳、画家の最高位【法印】についた探幽などが有名ですね》」

「一家相伝。でしかっけ?」
「よくご存知ですね」

おっ、バカにされた。
ガラス越しに睨んでみれば、ニコッと微笑まられる。

「《狩野派の絵師たちは、先祖伝来の絵の手本である粉本や、筆の使い方を忠実に学び、継承しました。
こうした制作には各々の個性は活かされず、「芸術的創造性を失っていった」という指摘もありますが、当時では一般的な方法だそうです。
狩野派は桃山・江戸時代を通し幕府御用絵師としての地位を保ちましたが、徳川幕府の崩壊とともに消滅しました》」
「時代についていけなかった?」

「武家社会が支えてきた伝統文化は明治維新により西欧化し、旧習は悪だと排除されてしまいます」
「良いものはいつの時代でも良いものなんだけどね」
< 125 / 183 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop