月とスッポン      ありのままは難しい

「本物か偽物かと言う表現は違うとは思いますが、
《十一面観音像の本像は先ほど行った微妙寺に、智証大師坐像は唐院大師堂内にある智証大師の廟所であり、寺内でもっとも神聖な場所として一般には公開されていません。
そこには3躰の秘仏が安置されているが、そのうち2躰が智証大師円珍の等身大の像なので、こちらは模刻像となりますね。他の1躰は通称黄不動尊とも呼ばれている【不動明王立像】です》」

定位置になりつつあり、狭いとは思っても不快には思わない。毒牙されているに違いない。
慣れとは恐ろしいモノだ。

「黄色ってことは?」
「《京都 青蓮院の【青不動】、和歌山県高野山 明王院の【赤不動】、そして三井寺の【黄不動】で三色です》」

私の目の前に手を出し指折り数える。

「《正式には【青不動明王二童子像】と言い、ご身体の色が青黒なことから通称【青不動】と呼ばれ、
礼拝画像でありながら、平安中期、藤原時代の気品に満ちた美意識が反映された、優美で華やかな画像であり、仏教絵画史のなかで屈指の名品です。

本尊の【赤不動明王】は、感得像で、円珍が修行中に感得した不動明王の姿を、その余りの有り難さに自分の頭を岩に打ち付け、岩絵の具に頭血を混ぜて写しとられたと言われています》」

「芸術とは」
「爆発ですかね」

なんかよくわからないが、なんとなく意味がわかってしまうのが芸術なのだろうか

「《そして838年 承和5年 、智証が洞窟で修行中に金色の不動明王を感得したが、 その姿を描き留めたのが【黄不動尊】です。
黄不動尊の根本像は、国宝に指定されている画像で、 三井寺の最高の厳儀である伝法潅頂の受者しか拝する事が許されない秘仏中の秘仏となっています》」
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