月とスッポン ありのままは難しい
「東雲さん乙ゲーのヒロイン系なのに、中身が全然違って笑えるよね」
「乙ゲーとは?」
「乙女ゲーム。女性が主役の恋愛シミレーションゲーム」
「あぁ、茜が憧れる悪役令嬢が出てくるのですか?」
「恋愛系には、ライバルとなる悪役は必需ですから」
「恋のスパイスですか」
大河がフッと鼻で笑う。
「山あり谷ありじゃないと物語は成り立たないと思いますけど」
「確かに」
「愛の力で乗り切ってこその乙ゲーです」
「東雲がそのヒロインだと」
「小柄で可愛くて、健気で甘え上手で男性の庇護欲を掻き立てるタイプ」
「東雲が」
「私に為に争わないで!みんな友達でしょとか言いそう。ってか言ってみたいですね」
緩やかな坂道から、まっすぐ伸びた階段へと差し掛かる。
「それはどんな状況なですか?しかも、争いの発端にも関わらず、みんな友達とか同等の扱いしてますよね」
また鼻で笑う。
「それは大河さんが東雲さんをどんな子か知ってるから。私、最初結構警戒したんですよ」
「そうなんですか?」
なぜちょっと嬉しそうなんだ?
「なんか人との距離めっちゃ近いじゃないですか、東雲さん。翔空に抱き付きそうな勢いだったし」
翔空の名前が出た瞬間、なぜちょっとがっかりした顔をする?
「梨花ちゃんも顔引きつったからね。あれは慶太郎のフォローがなかったらヤバかったって」
「慶太郎はなんと言っていたのですか?」
「えーっと、「あれは宮大工に対してのリスペクトだから気にするな」だったかな。まぁ、その後東雲さんに梨花ちゃんのお祖父さんは何度も伊勢神宮の遷宮に携わっているって言った瞬間、梨花ちゃんを拝み出したのには笑ったけどね」