月とスッポン ありのままは難しい
あの子は何をしているんだ
と小さく呟きながら額に手を当てる大河の姿に今度は私は小さく笑った。
後ろを振り向けば大津の街並みが見え、高い所まで登ってきたんだと実感する。
休憩の前にと観音堂へと向かう。
お決まりのコースで大河がいそいそと御朱印をいただいている間、ゆっくりと堂内を見て回る。
とても古い作りに中、飾られた装飾の細かさ鮮やかさがより一層引き立っているように感じる。
「《観音堂は、南院札所伽藍の中心建築で、後三条天皇の病気平癒を祈願して1072年 延久4年に創建されたと伝えます。
その後、現在地への移築と焼失を経て、1689年 元禄2年 に再建され今日にいたります。
本尊で重要文化財の如意輪観音坐像は33年ごとに開帳される秘仏です。
ちなみに前回のご開帳は2020年です》」
「2053年?生きてるかなぁ?」
「30年ぐらいは生きてていてください」
大河が私の頭をポンポンと叩き、外へと出る。
30年後、50を超えた私はどうしているのだろう。
琵琶湖を眺めながら、想像してみる。
恐ろしくて、身震いがする。
どうかこのままこの風景と共に変わらずにいられますように
「何を拝んでいるのですか?どちらにしますか?」
差し出されたカップを受け取る。色からして紅茶だろうけど、違いがわからない。
一口飲む。うん、アイスティーだ。
「アールグレイです」
もう一つのアイスティーにささったストローを私の口の前に出す。そしたら、飲むだろ。
うん、味は確かに違うけどアイスティーだ。
「こちらがダージリンです」