月とスッポン ありのままは難しい
「《造石山寺所という役所のもとで堂宇の拡張、伽藍の整備が行われ、本尊の塑造如意輪観音像と脇侍の金剛蔵王像、執金剛神像が761年 天平宝字5年から翌年にかけて制作され、本尊の胎内に聖徳太子念持仏の6寸如意輪観音像を納められ、石山寺は華厳宗の寺院が始まったそうです》」
「手作業で採石してたのなら、神様に無事を祈りたい気持ちもわかります」
東大門に辿り着き、仁王像をじっくりと見るために、話を締めくくる。
「運慶の作品ですね」
「力強さと美しさの融合ですよね」
東大門を潜り参道を歩く。
「この感じなんかいいですよね」
「そうですね」
「なんか現実世界からゆっくりと離れていくって感じ。ほら、私の家は店の真上じゃないですか。嫌な事とかあると、欲しいものなくてもコンビニに行ったりして直に家に入らないようにしてるんですよね」
「気持ちを切り替える時間ですか?」
「欲しくないですか?」
「会社の扉と家の玄関が繋がっていないかと思う時があるのですが、常に繋がっているのも考えものなんですね」
「まぁ、めっちゃ便利ですけどね」
いよいよだと志納所を通り過ぎ、見上げれば岩肌。
「石切り場から始まったって聞いてたから納得だけど、知らなかったらよく建てたと思うよね」
大河に同意を求め見上げる。
それなのになぜか微笑んで頭を撫でられた。
解せぬ。