月とスッポン      ありのままは難しい
その後の話


すぐに部屋に入る気にならず、階段に座り、鞄の奥底に眠っていたタバコを取り出す。
大きく吸い込み肺に煙を充満させ、空を見上げた。

その瞬間、両手で頬を抑えられ、さらに上を見上げさせられる。
なすがまま。
突然の事に力が入るが、嗅ぎ慣れた匂いにすぐに力が抜ける。

「タバコはやめるようにお伝えしたはずですが?」

反論しようにも首を剃り上げている状態では上手く話せないのでいき良いよく下を向く。
その勢いのまま振り向けば、いないはずの大河が私の後ろに座っていた。

なぜいる?
と思いつつも

「それはお酒ではなく?」
「タバコも体に悪いので、これを機会に」
「体に悪いのは重々承知の上で吸っているのでお構いなく。煙が気になるようでしたら、お家に帰ったらいいと思いますよ」

我ながら可愛くない。

もう一度吸えば、狭い階段に横並びになるように大河が座る。
窮屈だ。

「何かあったのなら、人に話すのがいいと思いますよ」
「人にあれこれ話すタイプには見えませんけどね」

「そうですか?父には比較的なんでも話しますよ」
「泰臣さんなら的確なアドバイスをしてくれそうですね」

でも、私には必要ありません

そう言おうと息を飲む。

「父からアドバイスをもらった事がありません。ただ話を聞いてくれるだけです。もちろんアドバイスを求めれば応えてはくれますが。
話す方は人に話す事によって頭の中が整理出来、自分の気持ちに区切りがつき、そして聞く方は相手の思いやその人に人間性を明確に理解できると父から教えられました。
とりあえず、茜は何も考えず今日あった事を言葉にしてください」


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