月とスッポン      ありのままは難しい

ご当地定番菓子の会


いつの時代も人の縁とは不思議なもので、昨日の敵が今日の味方になり、今日の味方が明日の敵になるものらしい。

そして、幾つになろうと心から反省ししっかりと自己を見つめ直すと人は変われるらしい。

後回しにしたせいで彩綾さんへの対応が遅れた。
そのせいなのだが、穏便に済ます為、彩綾さんの入居先を紹介してから、私たちの監視という名の報告会がいつのまにかお茶会になり、【ご当地定番菓子の会】へと変貌した。

そんなわけで、好好爺化した院長とお茶をしている。
「これ、今回のお土産です」
紙袋に入ったお菓子を手渡すと座るように促すも視線は紙袋の中。

「今回は滋賀ですね」
「ありがとう」と言いながら、早速紙袋から出した【そばぼうろ】を開け食べ始める。

「はい。比叡山をはじめ大津周辺です。控えめに言って、最高でした」

机の上に既に開いている七花亭菓子の詰め合わせに手を伸ばしながら

「北海道ですか?いいですね」
「全然ですよ。涼しいかと期待していたのですが、気温はこちらと変わらないので老体に応えました」

「北海道って涼しいっていうかイメージですけどね。そうじゃないんですね」
「異常気象ですかね」

声の主に顔を向ければ、声の主の手がそばぼうろに伸びる。

「延暦寺の浄土院はもちろん行った?」
「神聖過ぎて、背筋が伸びました」
「自分がどんなに穢れているのか」
「わかる。自分をもっと律しないとって思って下山した瞬間、食という欲にまみれるけどね」
「「わかる」」
< 172 / 183 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop