月とスッポン      ありのままは難しい
「おや、またかかってきましたね。では、茜ちゃんスピーカーで通話してみましょうか?皆さんはお静かに願います」

しんと空気が引き締まった気がする。

皆が手持ちのタブレットをそっと取り出し構える。皆が軽く頷き準備が出来た事を合図すれば、好好爺が
「では、始めてください」
と私に微笑む。

これは誘拐犯との交渉か何かか?

『茜か?久しぶりだね。元気だったか?』
「あぁ、まぁ」
『そうか。こっちもみんな元気でやっているよ。まぁ、子供達が二人とも受験で学校に塾に大変そうだけどね。ダブルで受験は色々な面で親も大変だよ」

そう人はそんなに簡単には変わらない。
人の事を気にしている風だが、何も気にしていない。何も聞いていない、感じていない。こういう人だ。

[仕送り請求?]

タブレットに表示された文字を見て首を傾げる。

[用件はよ]
[まずは相手の話を聞きましょう]

最高司令官である好好爺が指示すれば皆が頷く。

「どういったご用件でしょうか?」
『実はね』

勿体ぶらずに早い言えよ。
という気持ちを深呼吸で抑える。

『お母さんが病気をしてね。今、家にいるんだ』
「はぁ」
『あっ、でも今どうこう言う病気ではないんだ。だから大丈夫だよ』

何が大丈夫なのだろうか?

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