月とスッポン      ありのままは難しい

「再婚して婿養子に入ったと聞きました。法的な事はよく分からないですけど。私、家族じゃないですよね」
『法的には・・・でも、茜は私の血が繋がった』

それ以上、聞きたくなかった。
血の繋がりがなんだと言うのだ。
血の繋がりは免罪符なんかじゃない。

海達との繋がりが、血の繋がりより弱いわけがない。

「そもそもの話ですけど。
11時から22時まで、拘束時間10時間の週1休みなので、物理的にもお手伝いは無理ですよ。
私も忙しいので。今後、会う事もないでしょうからサインが必要なものがありましたら、職場までお送りください」
『どこに住んでいるかも教えてくれないのか?』

なぜ、悲しげな声を出すのか分からないので、聞き逃したことにしておく。

「教えても、近々引っ越すので意味がないかと。職場わかります?【飲食 葛】で検索かけてください。葛は植物の葛で、葛飾区のかつです。
では、今の家族を大切に《今まで育ててくれてありがと》って介護してもらえる人生を歩んでください。
無理そうならお金で解決してください。
私は一切の義務も義理もないので」

電話を切った途端に「よく言った」と褒められたり、「これ以上言ってくるようなら私に言いなさい」と心配されたりされながら、改めてと乾杯をする。

一つの事をやり遂げた連体感が生まれた瞬間を体験した。
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